貯金保険業務にたずさわっている場合は、暦どおり土日祝になる場合が多かったです(一概には言えませんが)。郵便にたずさわっている場合は土日祝も稼動していることから、不規則な休日になりました。休みの日は、規模の大きな普通局の郵便課、集配営業課の場合は、ある程度融通がききました。これは班ごとに勤務表を作成するので、「この日とこの日は休みにしてほしい」などと班長に言っておく、あるいは白紙の勤務表が置いてあり、自分の休みたい日に「非番」などと書き込むなど普通にやっていたからです。逆に特定局ではほとんど一方的に指定されることが通常でした(年休まで、別に休みたくなくても「この日に取ってくれ」と「指定」される場合がありました)。どうしても休みたい日は年休でとるか、誰かと変わってもらうことになりました。ひどい特定局になると局長の権限で「保険の推進が遅れている。日曜以外は出勤しろ。平日も夜9時頃まで仕事しろ(もちろん無給)。」というところがあったようです。なお年休は消化できなかった場合、「計年」という形で翌年に繰り越され完全消化するようになっていました。勤務表上では「週休(日曜が多い)」「非番(4週に4日なので1週に1日あるわけではない)」「計年」「代休」「祝日」「夏期(年3日)」などと表記されていました。このうち計年は郵政独特の制度で、これのおかげで民間はもちろん、他の公務員と比べても年間休日は多かったと思います。
当時は主に日本郵政公社労働組合(JPU、旧全逓)、全郵政の2つがあり、組合に加入している人はどちらかに加入している場合が多かったです。2つの組合は平成19年10月22日に統合され、日本郵政グループ労働組合(JP労組)となっています。また共産党系の郵産労や郵政ユニオンなどもあります(あまり見かけませんが)。同じ職場にいる人が全員同じ組合に加入している場合、やはりその組合に入ることがほとんどでした。これは組合に加入するというより、付き合いのようなものとなっていました(特に郡部の局)。同じ職場でどちらの組合員もいる場合引っ張りあいになり、これに乗じてどちらにも入らない人もいました。組合に入っていなかったり、違う組合だと仕事などを教えてもらえないといった嫌がらせを受けるという話や、「入っていないと真っ先にリストラされる」などといい加減なことをいって勧誘していた人もいました。少なくとも私の知っている限りでは、(以前いた普通局で)組合未加入の人もみんなとうまくやっていたと思います。
通常労働者側(組合)と使用者側(当局)は対立していることが基本ですが、組合幹部と当局幹部は密接に連携していたと言われており、特に組合上層部は末端組合員をほとんど顧みず当局の言いなりになっている面が多いことを指摘されていました。いわゆる御用組合と呼ばれるものです。彼らは「公社を潰さないためには労働条件が悪くなっても(末端職員が)痛みに耐えていくしかない」と言います。しかしそれであればいわゆる「特権階級」の人達も痛みが求められて当然です。自分たちだけは「痛みは嫌ですのでそのままがいいです」など通用する訳がありません。民間会社であれば「役員の報酬カット」「退職金の自主返納」など上部ほど痛みを受けているものです。
郵政民営化法案が可決により、郵政公社は平成19年10月から民営化(4分社化)され、10年後の平成29年10月に完全民営化を目指しています。この時の組合の対応も分かれ、全郵政は先に「民営化容認(止む無し)」の方針を打ち出しました。
組合費はどちらの場合も毎月5,000円以上かかっていました。
「郵政互助会」「郵政弘済会」「郵政福祉協会」の3つが、郵政互助会に吸収されるという形で平成17年10月に設立されたのがこの郵政福祉でした。旧郵政互助会は平成17年3月5日号の週間ダイアモンド誌の中で破綻寸前と報じられ、比較的財務体質に優れた弘済会などとの合併により窮地を脱したとの見方が多かったようです。民営化前に相当の退職者が出るものと見られ、それに備えたとの感も否めなかったようです。
旧郵政互助会から引き継がれた「ゆうイング」は職員の約8割が加入していました。こちらに加入すると結婚や子供が生まれたときなどは祝い金が出ますし、特定の施設を利用した時などの割引がありました。ただし毎月基本給の3%の負担が必要で、負担したお金は一応積み立てて、退職したときに退職給付金としてもどってくることになっていました。しかし国民年金と同様、職員の中には不信を抱いている人もいて、加入をためらう人も多くいました。
なお「ゆうイング」への入会の勧誘は本当にしつこかったです。新規採用基礎訓練で加入を勧められ、それでも加入しなければ互助会から役職者に向けて圧力をかけてきました。例えば「加入してもらうよう貴官よりお口添え願います」という主旨の手紙を図書券同封で送ってきて、今度は上司からも加入するよう説得されるといった具合です。それでもダメならさらに上の上司に同様の手紙を送ってきたりしていました。一旦加入すると脱会は大変で、本来個人の自由であるはずなのに、局長等管理者の承認印が必要でした。入会の際には必要がないのに本当に不思議です。脱会を食い止めたい気持ちはわかりますが、これでは説明がつきません。当然ながら当該団体も天下りでした。通常このような互助会は、他の公務員互助会を見ていただければわかりますが健全なものがほとんどです。無理やり加入を強要されるべきものではありません。なお旧互助会についてはかなりの権力を持っているといわれ、人事にまで影響を及ぼすことがあるといわれていました。
旧弘済会が行っていた主な事業は職員援護(病気や入院の補償)、災害補償でした。こちらの掛け金は金額的にはそう高くありませんし(少なくとも簡保よりは安いと思う)内容も悪くはありませんでした。ただ組合にも似たようなものがあり重複してしまいます。安月給であるにもかかわらずあれもこれも加入して、おまけに営業での「自爆」があれば生活が成り立たなくなってしまうので、やはり見極めが必要だったと思います。こちらも勧誘はしつこいですが、「ゆうイング」ほどではなかったと思います。退会も比較的しやすかったです。ただしこちらもなぜか、退会に管理者の承認印を必要としていました。
普通局の場合は同じ地域の普通局や、同じ局の別の課という場合がもっとも多かったです。また特定局の場合は同じ部会内の別の特定局へという場合が最も多かったです。ただ普通局と特定局の人事交流も進んできていましたので、特定局採用の人でも普通局へ行ける可能性はそれなりにはありました。特定局の人事異動方針の中にも「特に集配特定局においては、外務作業のノウハウが共有できる普通局との人事交流を積極的に取り組んで行く」とあったくらいです。
次に地域的な話ですが、「同じ支社管内だけれども遠い県なので、地元に帰りたい」という場合は年数が少しかかる場合がありました。私の知っている例では7年もかかった人がいました。異動希望調書にはあきらめず毎年その旨を書くことが重要で、途中であきらめて書かなくなると気が変わったのかと捉えられたそうです。あまり人気のない地域への転勤は比較的簡単だそうですが逆だと大変だったようです。
さらに違う支社管内への異動ですが、もっと大変でした。私は以前北海道の局にいましたが、関東、東京管内から北海道へ異動してきたという人を2人知っています(うち1人は同じ局でした)。このうちの1人は内地の出身ですが、奥さんが道内出身なのでこちらへ来たかったと言っていました。この2人に共通している点は、異動に際し組合の強力なバックアップを得ていたという点です。組合の上層部へ働きかけを行ったようですが、詳しいことはわかりません。なお逆に、例えば北海道から関東管内などへの異動は比較的簡単だったようです。札幌市内S局にいた人の例ですが、「もう戻って来られないぞ」と念を押された上一筆書かされたそうですが、すぐに異動できたそうです。
具体的な書類の話ですが、まず「職務に関する希望調書」を全員提出します。これが一般的な異動希望調書です。ところがこれ以外に「転勤希望申請書」というものがありました。さらに強く異動を希望する人が出す書類です。職員から自己都合により転勤を希望する旨の申し出を受けた場合は、所属長は特段の事情のない限りこの申請書を提出させることとなっていました。この「特段の事情」とは「郵便局等に採用後3年に満たない者から申し出があった場合」ですが3年に満たなくとも本人の希望事由が採用前の事情と著しく異なる等、社会通念上やむを得ないと認められる場合には所属長の副申を添え送付しても差し支えないとなっていました。さらに管外異動については「採用後5年に達するまで」とされていました。ですから4年目でこの申請書を提出し、管外異動を希望した場合は1年間保留されることになります。もちろんこの申請をしたからといって異動できるとは限りませんでした。また実現できた場合、赴任旅費の辞退、降任などの不利な条件を飲まねばならないことが普通です。管内配転の場合、転勤希望の局所、地域に欠員が発生すると要員需給状況を考慮の上、逐次斡旋を行うとなっていて、管外では受入機関と協議し、整うと具体的な取扱をその都度指示するとなっていました。
・辞職について
平成11年度のデータを見る限り、郵政が他の公務員と比べ、際立って辞職率が高いわけではありませんでした。年齢別では10代の場合、約5%と高めですが、20代で1%台、30、40代となると0.5%くらいです(平成11年度の内務外務を含めた全郵政職員のデータ)。ただ周囲をみると私も含めて身近にも辞めた人が多数いて、とても「20代で1%」(10%ですら間違いじゃないの?)など信じられないというのが率直な意見です。新採が多く郵便・集配に配属されていた平成13年度採用以前と比べて、現在では外務などは保険課配置が当たり前となっている中では、この率は民営化直前の時期には相当高くなっていたはずです。
・OBの天下りについて
公益法人、ファミリー企業、各メーカなど様々な所にわたっていました。このことが間接的にノルマの強化などという形で職員を苦しめることにつながっていました。「イベントゆうパック」の売上の7%を、取扱っている公益法人に入るシステムもそうです。この法人に勤めている人達は元公務員であっても現在は違うわけで、半官半民といえども民間会社員と同じなのです。どうして公務員がノルマ漬けになってこういう人達を支えねばならないのか実に不可思議でした。話は変わりますが、郵便局の赤い自転車(よく年末年始に高校生のバイトが使っている)の価格をご存知でしょうか。実は7万円しました(今ではもう少し下がっているかもしれません)。電動アシスト自転車や原動機付自転車が5万円台で売られている中で、あまりにも高すぎると思います。末端局員が厳しいノルマをこなし、経費節減に努め、立ち作業を強要されたりしてまで少しでも経営の改善を図ろうとしていたのにです。高額な物品の購入や修繕工事も入札もせず随意契約していたとすれば、赤字解消どころかますますノルマが強化され、赤字がどんどん進むという悪循環に陥る一方でしょう。この問題は根が深く、民営化された現在でもその弊害がしぶとく生き残っていることに、非常に腹立たしい思いがします。「末端職員のリストラばかり進めて、こういう部分は聖域としてなおざりにしておく」ことは本当に疑問に思います。