公務員時代末期には内務の場合、特定局の総合担務に当たった人を除くと新採ではあまり関われなくなった仕事です。普通局郵便課などまず行くことはありませんでした。外務の場合もほとんどが貯金保険に回されていましたが、16年度から普通局集配営業課での採用が復活したので、運がよいと当たった人もいました。また特定局の場合だと総合担務として郵便にも携わることになります。外務の場合新集配システムの導入で、「速達、小包(混合と呼ばれる)、営業」の担当を本務者がやり、受箱配達を非常勤がするという図式が定着しつつあったのも公社化の頃でした。内務も窓口、特殊とも非常勤化が進みました。営業ですが、主にイベントゆうパック、ふるさと(グルメ)会、レタックス、暑中見舞用郵便葉書(かもめーる)、年賀はがき、エクスパック500、レター(おたより)セットの販売などがありました。なおこのうちイベントゆうパック等のノルマはなぜか貯金課、保険課、総務課配属の人にも発生していました。
さてイベントゆうパックはこどもの日、お中元、敬老、クリスマス、バレンタインなど年中行事にかこつけて年間に10種類以上あり、その都度1人8個以上などと指標が与えられていました。この商品、品質の良さ?や送料が含まれていることを考慮に入れても高価で、あまりお客様にお勧めできるものではありませんでした。この高価な原因はこれを取り扱う天下り法人にあるといわれていて、イベントゆうパックの場合、売上の7%(以前は5%)が手数料として納められるしくみになっていました。多くの職員が「自爆」と呼ばれる自分買いでこれらの指標をこなしていました。バレンタインチョコを男同士でやりとりしていたのもこれが原因です。ふるさと(グルメ)会は年間を通して毎月1つ、産地直送で名産品が送られるしくみです。1個あたり3,000円の商品が多く12か月で36,000円になります。これが郵便専担で10個(360,000円)、総合担務で3個(108,000円)などと決められていました。こちらはさすがに「自爆」は大変です。こちらの代金は「ぱるる」からの自動引落ですので、わざと残高を少なくし引き落としされないようにすることで「難」を逃れる人もいました。郵便専担の場合、配達が終わってから営業というのは時間的にも不可能という場合が多く、通常でいう「営業」活動はほとんどできなかったようです。
通常郵便物はやはり月曜日が多いです。逆に小包、書留類は月曜日が最も少ないです。外務では郵便専担の場合、月曜日は増区(1人多くいれる)になっている場合もありました。この図式は民営化された現在でもあまり変わっていません。なお祝日の翌日は通常郵便物は特に多く、これを嫌っていつもそこを休みにしようとする人もいました。逆に最も通常郵便が少ないのは火曜日です。なお総担局の場合はなぜか土曜日が多かったです。この理由は不明ですが、営業時間確保の為、平日の配達量を調整し少なくして、土曜日に回しているという人もいました(あくまで噂です。こんなことを本当にやっていたら大変なことになります)。
集金業務、営業活動をします。定額貯金、積立貯金、国債、自動振替、年金自動受取、給与預入、ゆうちょくらぶ、ボランティア貯金、インターネットサービス、郵貯機能付クレジットカード、平成17年10月から始まった投資信託の販売など、こちらも多くの指標がありました。このうちゆうちょくらぶ(現ポスタルくらぶ)はやはり天下り法人が関わっていると言われていました。1年間350円の掛け金で、デビットカード機能を利用した窃盗などを保証するといったしくみですが、あまり無意味なような気がします。
なお定額貯金は利率も非常に悪く、預け替えもうまくいかないことが多かったです。現金で払い戻しをすると「流出」という形になるので、なるべく一旦普通貯金の口座にいれてもらうという手法をとっていました。このほか満期保険で再度保険に加入してもらえない場合、その満期金を定額に積んでもらえるようお客様に促しました。
通帳の自動振替の件数を稼ぐ方法ですが、たとえばAとBの2つの通帳(同じでも良いができれば違う貯金事務センターのもの、例えばAが小樽貯金事務センター、Bが大阪貯金事務センターといった感じで。遠方に旅行したときなどその地方の郵便局で作る)を作っておき、まずAで手続きし、しばらくしてBに口座を変え、またAに戻すのです。これで3件になりました。この方法は結構やっている人がいました。自払いは公社時代は重点とされていて目標件数がかなり上がりました。年金自動受け取りではこの方法が使えませんので一旦銀行等に移し、またゆうちょに戻すという人すらいました。定額貯金も6か月を待たず解約しても成績として残ったようです。ただこれらの方法は見かけだけの実績をあげるためのもので、取扱事務を煩雑にしてしまって本当に無意味なことだったと思います。
「ゆうちょくらぶ」は加入すると奇数月15日に350円の引き落としが行われ、残高不足で引き落とせない場合は翌月(偶数月)に引き落とされそれでも引き落とせない場合は無効となりました。これを利用して「ゆうちょくらぶ」の件数を稼いでいる人もいました。また脱会してまた入りなおすこともできました。ただし既に加入している通帳にさらに加入しようとすると処分を食らう場合があったようです。
貯金の外務の仕事も、郵便と同じくバイクで行っていました。ただ貯金、保険の専担の場合、北海道のような酷寒地では、夏冬とおしてバイクを使わず軽の四輪自動車で仕事をする場合が多かったです。
外務職はもちろん内務を含め、職員を一番苦しめるのが保険営業でした。公社化前後の新規採用者は、ほとんどの人が関わらねばならない仕事です。外務は基本的に集金業務を終えてから営業をしました(普通局保険営業専担除く)。簡易保険も相次ぐ値上げで魅力がなくなり、かなりお客様が離れていっていたのが現状です。満期を迎えても代替してくれる率はかなり低かったです。県民共済、全労済の掛け金から見てもやはり高かったです。例えば学資保険などは、以前100万円の満期を受け取るのに70万円払っていたのが110万円も必要になったという具合です。
保険にも指標と言う名のノルマがありました。例えば普通局保険課で年間600万円(月にすると50万円)、総合担務局で年間60万円(月5万円)などと指標が与えられます。この月50万円というのは、例えばある人に養老保険・満期500万円に加入してもらい、その毎月の保険料が29,000円だったとします。するとこの29,000円が成績になるわけです。あと残り471,000円以上の保険を取ってくればその月の指標は達成できたことになります。特別養老、特別終身、定期付終身などの商品については1.2倍、1.5倍、2倍カウントになるものもあります。例えば特別養老保険10倍型500万円の保険料が7,000円だったとします。特別養老10倍は2倍カウントになるので、成績は14,000円ということになります。もちろんこのような有利なカウントを利用しない手はありません。ですからお客様にはできるだけカウントの高い商品を勧めるといった営業手法が大切でした。できれば特養(1.2倍、1.5倍、2倍カウント)か特終(1.2倍カウント)、定期付終身(1.5倍、2倍)のどれかを自分の得意としそればかり勧めるのです。「自爆」するといっても保険は貯金のように契約してすぐ解約という手は使えません。1か月で解約するとその分がマイナスカウントになります。2か月分払えばマイナスにはなりませんが、2か月分の保険料を丸々捨てることになります。しかし背に腹は代えられず、「2か月解約」する人が目立って増えてきたため、支社では目を光らせていたようです。このように「保険の自爆」は大変でした。「お客様第一で仕事がしたい」と本気で思って郵便局にはいり、その気持ちを持ち続けたい人には、保険課や保険を含む総合担務はあまり向かないと思いました。思いつめるようなタイプの人の場合は、上司から成績のことを責められ続け、精神的に支障を来たす人も多くいたようです。実際に心の病で、障害共済年金(平成27年10月より障害厚生年金へ移行)を受給したり、精神障害者保健福祉手帳を取得したりする人もいました。
お客さまのためにという気持ちは大切ですが、きれい事では済まされません。指標が達成できないと本当につらい目にあわなければなりません。「コンプライアンスに引っかかろうが、お客様に嫌われようがやらねばならない」ということを平然という上司すらいました。愛想をつかしてアリコなどの外資やソニー生命などへ去っていった人も多くいました。